ポルトクオーレ事務局員の心理学初学者ブログ

臨床心理学総合アカデミア ポルトクオーレ事務局を担当している心理学初心者のブログです。

池袋暴走事故の第一審判決を受けて

2019年4月19日に東京都豊島区東池袋四丁目で痛ましい交通事故が起きました。

加害者の車が暴走し、母子2人が死亡、

同乗していた加害者の妻を含む9人が負傷した凄惨な事故です。

 

私も当時このニュースに非常に衝撃を受け、個人的に関心を寄せており、
自身でも池袋で実施された厳罰を望む署名運動に参加しました。
また、法学部出身の人間として裁判の行方にも注目していました。

 

裁判では、検察は事故の原因が被告人のブレーキとアクセルの踏み間違えだとして、
過失運転致死傷罪の上限である禁錮7年を求刑したのに対し、
加害者の飯塚被告人とその弁護士は一貫して車の異常による無罪を主張。

 

有罪か無罪かを争うこの裁判の争点は過失の有無、
つまり飯塚被告人の車に異常が認められるかどうかという点でした。

 

検察は事故車両の検証、ドライブレコーダーの記録、トヨタ技術者の証言など、
様々な視点から過失を立証する客観的な証拠を挙げていきましたが、
それでも飯塚被告人は依然として過失を認めず、
あくまで車の異常による無罪を主張しており、
被害者遺族の松永さんもカメラの前で憤りを隠せなかったのが記憶に残っています。

 

もちろん無罪を主張することは被告人の当然の権利であり、
何人たりとも侵されてはいけないものですが、
一般的な感覚から言えば、どんな証拠を挙げられても、
「私は悪くない」と言っているのと同じで、
全く反省していないと映っても仕方がないのではないでしょうか。

 

そして2021年9月2日、その第一審判決が下されました。

 

判決は、禁錮5年の実刑判決
検察の求刑よりも2年軽い判決となりました。

 

この判決を軽いと見るか重いと見るかは人それぞれですが、
私は無罪や執行猶予付きの判決が出ずにほっとしたというのが第一印象です。

 

「疑わしきは被告人の利益に」という法諺(法律に関する格言)がある通り、
裁判官が「車の異常がないこと」を信じるに足る十分な証拠がなければ、
無罪判決が出てもおかしくない裁判だったからです。

 

「ないこと」を証明するのは極めて難しいことです。
試験問題でも含みを持たせた選択肢の多くが正解となるのは、
出題者が「ないこと」を証明するのがとても大変だからです。

 

裁判は加害者も被害者も心身ともに疲弊します。
ポルトクオーレの講座「基礎心理学①」のストレス領域でも学びましたが、

ホームズとレイの社会的再適応評定尺度(ストレスの度合いを測る表)の中で、
「配偶者の死」が第1位、「家族や近親者の死」が第5位、
加害者側は「刑務所などへの収容」が第4位のライフイベントとなっています。


松永さんはご自身のブログでも、

 

「一審の判決が出たら、もう辞めにしませんか。
こんな何も生み出さない無益な争い、もう辞めませんか。」
引用:飯塚幸三被告人へ | 池袋暴走死傷事故 遺族のブログ

 

と心の声を語っています。

 

ただでさえ妻と娘を亡くされ、過剰なストレスを抱える中、
裁判でも疲弊され、松永さんのストレスは想像を絶するものだと思います。
このまま控訴されず、判決が確定されること祈ります。

 

そして、二度とこのような事故が起こらない世の中になってほしいと願っています。


最後まで読んでいただきありがとうございました。