ポルトクオーレ事務局員の心理学初学者ブログ

臨床心理学総合アカデミア ポルトクオーレ事務局を担当している心理学初心者のブログです。

小田急線車内切りつけ事件

恐ろしい事件が起こりました。


2021年8月6日、小田急線車内で、
男が刃物を振り回して乗客を切りつけ、10人が怪我をした事件です。


幸いにも亡くなった方はいないようですが、
既に複数の被害者が、人混みへの恐怖や「電車の利用ができない」など、
精神的な被害を訴えているそうです。

 

このニュースを聞いて、最近心理学を勉強している私は、
PTSD心的外傷後ストレス障害になってしまうのではないかと、心配しました。

 

PTSDとは…

死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なく
フラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、
不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態。

出典:PTSD|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省

 

ポルトクオーレの公認心理師臨床心理士対策講座でもこの病気を扱っていたため、
すぐに頭をよぎったのだと思います。

 

PTSDの診断基準は以下の通りです。

【出来事】
1. 危うく死ぬ
2. 重症を負う
3. 性的暴力→生涯有病率は女性の方が高くなる。
*いじめによる無視などは対象外
*6歳以下は単回性のみ(6歳を越える場合は繰り返しの出来事の場合あり)
複雑性PTSD・・・長期反復的な心的外傷の結果生じるPTSD

 

【手段】
1. 直接体験
2. 目撃
3. 近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。
4. 心的外傷的出来事の強い不快感を抱く細部に、繰り返しまたは極端に曝露される体験をする(例:災害映像を繰り返し見るTV局社員、遺体に触れる自衛隊員)。
*4は6歳以下には適用されない。

 

【症状】
1. 再体験(侵入症状)
2. 回避(≠解離)
3. 過覚醒
4. 認知と気分の陰性的変化
の4つともに生じる。

 

【期間】
1か月以上(1か月未満は急性ストレス障害ASD

 

今回の事件を元に一つずつ考えてみたいと思います。

 

【出来事】について…
1. 危うく死ぬ が該当しそうです。

2. 重症を負う も傷害の程度によっては該当するでしょう。
3. 性的暴力 は報道されていません。

 

【手段】について…
被害者は1. 直接体験 に該当します。
目撃者も2. 目撃 に該当します。
被害者のご家族やご友人も3. 近親者または親しい友人 に該当します。
4. 心的外傷的出来事の強い不快感を抱く細部に、繰り返しまたは極端に曝露される体験をするは、
事件の生々しい映像は放送されていませんので該当しないと思われます。

 

【症状】について…
ニュースでは2. 回避(≠解離) が既に報道されていました。
4つに該当しなければPTSDの診断はつきませんが、
後々そうなってしまう可能性はないとは言えません。

 

【期間】について…
この記事を書いてる段階では1か月以上経っていないので、
PTSDの診断はつきません。

 

要素を一つずつ確認していくと少なくとも期間の関係で、
現時点ではPTSDと診断されることはないようです。
だからと言って全く安心できることではないですが。。。

 

ニュースは身体の傷はすぐに報道されますが、
心の傷は人によって異なりますし、あまり詳しく報道されません。
目で見る、耳で聞くよりももっと多くの被害が出ていること、
また、その被害者に寄り添う心理職の方々がいることを、

日々忘れてはいけないと思いました。

 

加害者の男性は「幸せそうな勝ち組の女性を見ると殺したくなる」と供述していて、
非情に身勝手な理由で憤りを覚えずにはいられません。
それと同時に、加害者の心理状況はどのようなものか、興味関心も湧いてきました。
警視庁は今後、事件の詳しい経緯や動機の解明を進めるとのことです。

 

健康に生きていてもある日このような事件に巻き込まれ、
精神を病んでしまう恐れがあるということを改めて感じました。
二度と同様の事件が起こらないことを祈るばかりです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。